matsuhiro blog

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【観察】外国人と防災のワークショップ

2017年2月11日(土)、「災害が起きたとき外国人をITで守る検証ワークショップin草津」に観察として参加した。

 

詳しくはこちら参照。

災害が起きたとき外国人をitで守る検証ワークショップ

 

 

 

【初めに】

昨年の2016年3月の「災害時外国人支援ハッカソン」で作られた、避難所支援システム「TSU・NA・GU」の検証をした。「災害時外国人支援ハッカソン」は開催されたあとに知り、行ってみたかったと歯がゆい思いをしていたので、今回参加できてうれしい。

 

ワークショップのお題は「災害対策本部に届いた様々な情報を多言語化して、避難所に届けられる状態にする」だ。

 

「2017年2月4日(土)に草津市震源震度6強が起こる。その災害から1週間後の今日、情報ボランティアとして災害対策本部に設置された『草津市災害多言語支援センター』にいる」という想定。今回はその避難所支援システム「TSU・NA・GU」を使うチームと、使わないチームの2チームに分かれて行われた。その2チームはそれぞれ、「TSU・NA・GU」と「災害多言語支援センター設置訓練」で使われる全国的なマニュアルに沿って、お役所から紙媒体で送られてきた書類21枚を多言語化して避難所に届ける。ワークショップの時間は約2時間。

 

 

 

【2チームの性格】

避難所支援システム「TSU・NA・GU」を使うチーム(以下「デジタルチーム」)と、使わないチーム(以下「アナログチーム」)は面白いほどに対照的だった。

 

デジタルチームは「質より量」で、書類21枚のうち約8割は日本語の記事があり、約5~7割はタイ語ポルトガル語・フランス語に翻訳した。ワークショップ開催の約2時間のうち約30分は「TSU・NA・GU」の使い方の説明で、残りの1時間半は日本語のテキスト入力と多言語化の作業をひたすらしていた。

 

それに対し、アナログチームは「量より質」で、書類21枚を三つの班に分かれ今日発信すべき内容を「やさしい日本語」に書き直してから多言語化した。ワークショップ中の約100分が会議によって成り立ち、翻訳はそのあと行われた。

 

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【各チームの状況】

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【作業手順】

ワークショップが終わったあと、総評をするためにまとめる作業をした。そのときに書いたものがこれ。水色のペンで書かれたものは、発表中に書き足した。

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最初、デジタルチームは操作説明などで手間取っていて手順が多く難しい印象を受けた。だが、そっちよりもアナログチームの方が見えない手順が多く、次回も同じようにできるのかと疑問に思った。というのも、外国人や翻訳、防災に妙に詳しかったり場慣れしているような人が何人かいるなと思ったからだ。ワークショップ後に聞いてみると、本当に関係者の方が多く参加されていたそうだ。実際の現場ではボランティアばかりで今回のようになれた人がいるとは限らない。

 

デジタルチームの参加者は「やることが明確でわかりやすい」「優先順位は受け取る人が決めるので、全部あげた方が良い」と言い、アナログチームは「現場だからこそ整理できるものがある」と言っていた。

 

 

 

【翻訳について】

外国人が翻訳しやすいのは、圧倒的にアナログチーム。わかりやすいように「やさしい日本語」で翻訳する情報を書き直している。また、「地震から1週間後はどういう状況なのか」を話し合い今翻訳する情報をピックアップしていった。「やさしい日本語」にする際も、外国人にこの言葉はわかるかどうか添削をしていた。その時に言っていたことは以下の通り。

 

・「生活品の配布」より「食べ物あげます」に変える。外国人はタイトル見て自分にいらないなーと思ったら中身を見ない。だからタイトルをわかりやすくする

・ふりがなは、カタカナよりひらがなの方が読める

・「13:00」より「PM1:00」表記。24時間の時刻は使わない

 

今回の観察ではわからなかったが以前に行われたワークショップでは、翻訳する外国人もGoogle翻訳を使っていたそうだ。難しい言葉が多いためだという。デジタルチームの参加者も言っていたが、便利なGoogle翻訳でも精度が甘いときがあるので気をつけなければならない。エンジニアはそれに対し「この文章はGoogle翻訳です、とか翻訳精度が甘いです、監修済みですとかあったらいいかも」と言っていた。

 

 

 

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作業のしやすさでは、デジタルチームの方が何をするのか明確でやりやすい印象。アナログチームは会議が多く、時間短縮のためにグループを分けてもやっていることがバラバラだったりとコミュニケーションなどの見えない作業が多い。その点、デジタルチームはエンジニアの方が先生のように作業手順を教えるだけでいいので、翻訳作業に集中出来る。

 

翻訳のしやすさでは、アナログチームの方がやりやすい。そのためには、「やさしい日本語」にまとめ直さないといけないが、翻訳する外国人のほか日本人にもわかりやすい言葉になっている。

 

作業や翻訳のしやすさのほか、アナログチームはどの情報を今伝えるかを考えていた。アナログチームは今日明日で必要な情報を翻訳。翻訳作業にも時間がかかるしもらった情報も多くそれを読むのにも時間がかかるからだ。もらった情報の中には、罹災証明だったり避難所などのいつ見てもいい情報と、日付が限られている支援物資などのある特定の期間以前に見ないと意味がない情報がある。そういった、情報の鮮度を見極めて発信することも大事だと気付いた。

 

 

「災害対策本部に届いた様々な情報を多言語化して、避難所に届けられる状態にする」には、以下の点が関わってくる。

・届いた情報をジャンルごとに分ける

・鮮度のある情報をいち早く発信する

・まとめられる情報はまとめる(支援物資情報など)

・翻訳の精度に気をつける

・「やさしい日本語」を使う

 

 

 

【最後に】

防災のことについて卒業制作をしていたので今回お声がけいただいたのだが、防災と外国人のことについて触れるのは初めてだったので新鮮だった。「やさしい日本語」という減災のために考えられた日本語は、外国人以外にも日本人にもわかりやすいので積極的に使っていきたい。

http://human.cc.hirosaki-u.ac.jp/kokugo/EJ1a.htm

 

以下の画像は、蛇足。

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